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BA協会からの提言

2025年1月23日 初版

【提言】ビルディング・オートメーションシステムにおける検針・課金品質向上について

一般社団法人 ビルディング・オートメーション協会

提言の位置付け

  ビルディング・オートメーション(以下、BA)システムにおける検針・課金機能は不動産事業の中でビル管理上、大変重要な機能のひとつとして位置付けられています。この機能の正確な運用は、不動産会社、ビル管理会社からの料金請求の信頼性を確保し、トラブルを防ぐために不可欠です。そのため各BAメーカやBA工事会社は工事品質の向上により個別にトラブル防止策を講じていますが、更にBA業界全体で統一された取り組みが必要とされています。

  上記取り組みを実現するため、まずBA工事会社向けに本提言を作成しました。

  提言をまとめるにあたり、弊協会理事会社にて検針・課金トラブルの実例を分析し、再発防止策を、「BA工事会社が実施すべき内容」「設備設計者(注)への依頼内容」「不具合事例から見た技術的注意点」の3つの項目に整理しました。

  提言内容は、①発注図面の特記仕様書・設計図、見積書への明記、②施工中、施工後書類への明記、③BA工事会社への再発防止となっています。

  加えて、検針品質向上のため有効な「新たに導入すべき技術」として、計量メータと中央監視システムとの通信接続の採用を推奨しています。

(注)設備設計者とは、設計事務所(設備担当)、建設会社(設備設計担当)、 設備工事会社(設備設計担当)を示します。

 

1.BA工事会社が実施すべき内容

  ビル管理に於ける検針・課金ポイントの信頼性を確保するためには、設計段階から保守点検契約に至るまで、工事仕様、契約条件の明確化、顧客とのコミュニケーション確保等が必要です。そのために設計図、見積書への条件明記、施工・調整時のドキュメント管理、竣工引き渡し時、保守点検契約時の契約範囲に関して具体的な行動指針を示します。(表1:BA工事会社が実施すべき内容を参照ください)

表1:BA工事会社が実施すべき内容

1-1.設計時点(新築/改修)

  注)設計図、見積書への記載は設備設計者に説明の上、実施

設計図見積書             記載内容
・システム機能図に検針・課金機能を記載
・中央監視ポイント表、計装図、平面図に課金対象ポイントを明記
・計量メータは現地表示付とし、単位、パルスレート、メータ名称を明示する
ことを記載
・2線式水道メータの採用を記載
・メータ3回読合せ時、施主、施工関係者の立会い必須である事を記載
免責事項を記載
・品質不適合責任対応期間は引き渡し後1年間とする

1-2. 設計時点(メータ更新時)

  注)設計図、見積書への記載は設備設計者に説明の上、実施

設計図見積書              記載内容
・既設メータと同仕様品を採用(配線仕様、パルスレート)
・メータ交換時の離線・結線作業の工事区分を明記(設備工事を基本)
免責事項を記載
・品質不適合責任対応期間は引き渡し後1年間とする

1-3. 契約時点  注)見積書へ記載

設計図見積書              記載内容
免責事項を記載
・品質不適合責任対応期間は引き渡し後1年間とする

1-4. 施工・現場調整時点

  注)チェック表、未調整リストへの記載は、施主・ゼネコン・サブコンへ説明の上、 実施

チェック
未調整
リスト
                  記載内容
読合せチェック資料に、3回読合せチェック時立会い確認欄を設け、客先サインを貰う
完成検査時点で実負荷がない未調整のメータリストを施主、元請会社に提出し、請求前に実負荷を作ってもらうよう書面でうたう

1-5. 竣工引き渡し時点

  注)取扱説明書への記載は、施主・ゼネコン・サブコンへ説明の上、実施

取扱説明書                記載内容
契約条件に関わる条項を記載する

1-6. 保守契約時点

  注)保守契約書への記載は、施主へ説明の上、実施

保守契約書                 記載内容
検針・課金関連業務に関する契約範囲を明記する

2.設備設計者への依頼内容

  特記仕様書に、計量メータ仕様書の提出、設置に関する配慮等、具体的な記載依頼事項を定めます。(表2:設備設計者への依頼内容を参照ください)

表2:設備設計者への依頼内容

2-1. 設計時点(新築/改修)

  注)特記仕様書への記載は設備設計者に依頼

特記
仕様書
 特記仕様書への記載依頼案      記載理由
・自動制御メーカ、衛生・電気などの計量器メーカとの打合せを密に行い、内容把握を確実に行う事
・計量ツリー図、計量メータ台帳、計量区分図(平面)、課金計算式)を提出し承認を得ること。承認後、説明資料としてまとめる事。と記載
・設計者の指導の下、請負業者全体で協力し、計量ツリー図、計量メータ台帳、計量区分図(平面)、課金計算式をまとめることで、BAシステムの正しいエンジニアリングが可能になるため
・計量メータは現地表示付とし、単位、パルスレート、メータ名称を明示する事。と記載・計量メータとBAシステムの接続ミス、単位・パルスレート設定ミスを防止するため。
・水道メータの設置は、できるだけ現地表値の目視が容易である事。と記載・BAシステム調整時、現地表示値を見て中央監視装置表示値を合わせる。
現地表示が見やすければ調整ミス防止に大きく寄与するため。

3.不具合事例から見た技術的注意点

  結線ミス、パルスレート設定ミス、中央監視システムへのポイント登録ミスなど、技術的なトラブルを未然に防ぐための注意点を列挙します。具体的には、仕様の確認、ソフトウェアのリビジョン管理、メモリ保護時間の考慮、実負荷での読合せなどが挙げられます。(表3:トラブル防止のための技術的注意点を参照ください)

表3:トラブル防止のための技術的注意点(実例をベースに作成)

    内容          注意点
メータ結線ミス・計量メータの仕様をよく確認し結線を行う事。特に水道メータは2線式と3線式という異なる接続方式があるので注意する。
(設計段階から2線式を要求するが、やむをえず3線式が納入された場合、メータ施工説明書を入手し仕様を確認する事)
パルスレート設定ミス・計量メータの仕様をよく確認し調整する事。また計量メータ台帳とのパルスレート差異がないかも確認する事。
・電力メータでパルスレートの表示が小さく確認がしづらいメーカがあり要注意。
中央監視システム(センター装置)へのポイント登録ミス・中央監視システムのデータファイルのリビジョン管理を徹底し、メーカ出荷時データと現場データとの不整合を起こさないようにする事。現場でデータファイルを変更した場合にミスが発生しやすい。
・現場での検針ポイント客先追加要求については、必ず客先からの指示書をもらい、エビデンスを残した上で対応する事。
中央監視システム(リモートステーション)のメモリ保護時間考慮・リモートステーションの停電時メモリバックアップ時間を考慮し、調整・保守を行う事。(中央監視システムの仕様によっては、リモートステーションの持つ積算値が0にリセットされる)
実負荷での読合せ・検針ポイントが正しくデータ収集しているか確認するため、実負荷時での読合せを3回実施する事。うち客先立会いでの読合せも1回は実施する事。読合せ確認ドキュメントに客先サインをもらう事。
・熱量メータについては、夏/冬切替えの関係でテナント入居時に実負荷試験のできない場合がある。実負荷のかかる時期に別途試験を行う事。
計量メータ台帳との整合・計量メータ本体にメータNOを貼り付けてもらうよう要求する。
計量メータ台帳と計量メータに貼り付けられたメータNO、中央監視システムセンター装置でのポイント名称が一致していることを確認する。
計量メータ交換時・交換前と同一計量メータへの交換を要求する事。特に熱量計は温度センサ取付けが困難になる場合がある。

4.新たに導入すべき技術(計量メータと中央監視システムとの通信接続)

  計量メータの計量値は、計量単位当たり1パルスの接点で中央監視システムへ送られるのが現在主流となっています。この仕様では調整に多くの労力が発生する上、竣工後も停電時や中央監視システム更新時に計量メータとの表示値確認作業に多くの労力がかかります。

  日本国内の主なBAメーカの中央監視システムは、各種デバイスとの通信接続機能を有しており、また多くの水道メータ、ガスメータ、電力メータも通信対応をしています。  このような状況の中、今まで主流であった接点による計量メータとの接続ではなく、計量メータとの通信接続の採用をビルディング・オートメーション協会として推奨いたします。

  通信接続になれば、配線ミス、パルスレート設定ミスの減少に加え、竣工後、停電時や中央監視システム更新時に計量メータとの表示値確認作業が大幅に軽減されます。(これら多くのメリットがあるため、国内の大手不動産会社での採用も始まっています)

  当面はデバイス間通信のデファクトスタンダードであるModbus通信による接続標準化を設計図への採用から進めてまいります。

 

本提言を、ビルディング・オートメーション協会理事会社が主導実施することで、BAシステムの検針・課金機能の品質向上を図ってまいります。